多苗尚志の華麗なる不運

 

今年2003年、6月25日から厄除けかと思われる程に不運というか裏目が続く。

 

第一陣

パソコンが壊れた。

まぁ、手荒な使い方をしてたかもしれない。

直接、IBMに出しては時間がかかるし金も掛かるだろうから、ヨドバシのPC−DOCという修理コーナーに直接持っていった。

仕事の隙をついてもっていった。

ヨドバシは営業していたがPC−DOCは休みだった。

翌日、仕事の隙をついて持っていった。

PC−DOCはthinkpadに対応していなかった。

 

thinkpadの修理センターの電話番号を紹介してもらった。
フリーダイヤルだったのでそのまま近くの公衆電話からサポートセンターに電話した。

こなれた女が出てきた。

CPUのファンが引っ掛かる音がすると訴えた。

「んー、CPUよりHDの問題じゃないでしょうかね〜。引っ掛かる音を聞いたら大体分かるのでPCを電話口に近づけてもらえませんか?」と言われた。

電話ボックスの中だったし、
バッグから取り出すのが面倒だったし、
電源を入れて待つのが面倒だったし、
今音が鳴るか分からなかったし、

第一、この女プロっぽくないので音聞かせても分かんないだろうなと思ったので
「イヤです」と答えた。

「修理センターに送っていただいてもまず原因を調べるだけで壱万五千円掛かります。簡単な原因だと分かっても壱万五千円掛かります。」
と脅されたので窮屈で暑い電話ボックスの中、肩に受話器を挟んでバッグからPCを取り出して、電源を入れて待った。

すぐハッキリと音がしたので
「ほら!この音です」といってPCを受話器に近づけた。

「んー、ちょっと聞こえないですね。」

今度はもっとハッキリ音がしたので受話器に近づけた。

「んー、そちら繁華街ですか?色々な音が混ざってよく分からないんです。」と言われた。

己にしては珍しく、不思議と怒りは沸かなかった。

「じゃいいです。もしCPUの問題として直していただくには幾ら掛かりますか?」

「んー、ピンキリなので一口には言いにくいのですが八万円くらいか、と」

原因調べと合わせて十万円かよ。

ハイスペックなデスクトップ買えるじゃねぇか。

ロックスターがライヴでギターを折るように、潔くthinkpadを膝で叩き割ってその様子を動画配信したら本気サイトの視聴率も上がるかな?と思った。

第二陣

パンを買って公園で食べていた。

公園にはゴミ箱がなかった。

己はゴミをちゃんと捨てる人間だ。

いまどき燃えるゴミと燃えないゴミが分かんない奴はどうかと思う。

パンの紙袋をもって街を歩き回った。

コンビニのゴミ箱は燃えないゴミ箱(己はコンビニのゴミ箱にいつも裏を突かれる)だったり、一杯だったりしてなかなか捨てられなかった。

ようやく表参道の駅のゴミ箱に紙袋を捨てた。

一時間後、戻ってきたときにはその紙袋だけなくなっていた。

家亡人の方々がもっていったのか…。

なぜ、戻ってきたかって紙袋の中に財布を入れていて、財布の中に三万円入れていたからだ。

己史にしては珍しく二年程生きたゴルチェのガマ財布。

百人でスキーに行ったときに、雪の中に埋もれつつも、一ヶ月後雪が解けて己の元へ還ってきたステキな財布だった。

ポケットが財布の時代、再来。

第三陣

みんなで銭湯に行く約束だった。

パソコンは壊れているので案内のメールが読めず、銭湯の名前が分からないので、集合に遅れてはならない。

 

一駅寝過ごした。

 

一駅寝過ごすだけで15分の遅れ。

みんなは先に行ってた。

己のケータイの電池はほぼ切れていた。

駅の近くの交番で銭湯を聞いた。

銭湯は沢山あるという。

確か「月の湯」だったと思ってその名前で調べてもらったが、巡査は難儀した。

 

最後の電池を振り絞ってみんなのケータイ番号を絞って

交番で電話を借りて“印度島田”に電話したが出なかった。

“ずっしみ”に電話したら留守電だった。

“セリ”に電話しても出なかった。

 

「月」というに松月湯ならあると言われてそこへ向かう。

南へ徒歩20分。

松月湯。

あった。

友は誰もいなかった。

公衆電話から100円かけてルームメイトの“均”に電話した。

均は出た。

均は銭湯企画を知らないが同じくルームメイトの“ケン”は知っているのでケンに代わってくれと言ったらケンはいなかった。

「今日はビーチバレーじゃない?」

じゃあ、とりあえず均にパソコンで検索してもらおうと思ったら均はパソコンを実家に置いてきていた。

100円かけてさやかに電話した。

さやかにも銭湯メールがいっていたので調べてもらうことにした。

公衆電話から電話すると事情を説明するだけですぐ百円が切れて面倒なのでコンビニで800円出してauのケータイバッテリーを買った。

時間はもう30分も経っていた。

チキショーと、急いで開けて、装着しようとしたら、それはdocomoのバッテリーだった。

返品しようと思ったが、パッケージを破ってしまっていた。

更に800円出してauのバッテリーを買った。

やっとさやかに電話すると銭湯の名前が分かった。

 

「月の湯」だった。

 

近くの交番で調べると月の湯は最初の交番から北へ徒歩15分のところにあった。

超逆サイ。

最初の交番を経由し、北へ急ぐと風呂から上がるみんなに会えた。

最後までゆっくりお風呂を楽しむケンがいた。

風呂からあがってみんなで酒を呑んだ。

盛り上がった。

盛り上がって銭湯呼び掛け人の“山中たくんど”を胴上げをしてやったら、そのどさくさで眼鏡のフレームが折れた。

 

第四陣(極めつけ)

去年一年遊び暮らしたのでさすがに少し借金ができてしまった。

でも、働きだしたのでこれからはまとまった金が入るので安心だ。

ADの仕事のひと月目の給料が入った。

嬉しい。

三井住友に振り込まれる。

己はみずほがメインバンクなので、みずほに移すことにする。

みずほに移しておけばネットバンクが使えるので便利だ。

土曜に金が必要となった。

コンビニのATMまで行ってみたら105円の手数料が掛かることが分かった。

手数料はやはり馬鹿馬鹿しい。

十分ほど歩いて三井住友直営のATMに行き、そこで全額おろした。

210円の手数料をとられた。

明細書発行の確認はしなくていいから、手数料が掛かることの確認をして欲しいものだ。

 

悔しさは金額に単純比例しないことを知った。

 

翌々日の夜、みずほのATMに行った。

重い手荷物を両手に抱えてひいひい言いながら。

やっと振り替えられるゾ。

荷物をおろし、給料全額を鞄から出し、機械と対峙した。

借金もいくらか返せるネ。

だが、夜のATMは引き出しはできても、振り込みはできないのだ。

「ちっ」と舌打ちをして、振り返り、腰を入れ、重い荷物を両手にもち、ATMを出て行った。

 

 

給料全額を機械の上に置いたまま。

 

気付いたのは翌朝。

クレジットカードを落としても、使用を止めない己がさすがに警察とみずへに電話した。

源泉徴収と精算を済ませた十四万は今日も還ってこない。

スゴイことに気付いた。

一千億稼ぐ世界的富豪が豪快に997億とんで、582万3600円とか落としたとしよう!

でも、2億9417万400円残ってるじゃない!

やってけるでしょ。

己はたった十四万しか落としてないが、それは今月の給料全額なのだ。

全額だよ?

スゴクない?

どんな金持ちも給料がそのまま手元に入らなければ生活は苦しいのだ!

なんかスゴイ。

働いたら借金が増えたという泣き笑い的な感じでステキでした。

 

でも、こっからが己はスゴイ!と自分で自分を持ち上げる。

亡くしたことに気付く前は、給料が入ったので久しぶりにバーン!と外食をしようと思っていたのよ。
頑張った自分にご褒美ってな人生のささやかな悦びッ!

そうだ!メーヤウの激辛カレーを食おう。景気づけにドバッと汗を流そう!そうしよう!

そして、金を失ったことを気付く。

はい、気付いた!

 

己は、20分間、街中で(ATMの前で)座り込んで落ち込んだ。いいだろ?全額なんだ。それくらい落ち込ませてくれ。

先に借金だけでも返しておけばよかった、とか

ATMが夜に預け入れさせてくれないからいけないんだ、とか

うじうじ考えたよ。

そしてすっくと立ち上がると「これで帳尻が合う」とつぶやき、生涯初めてサマージャンボを買った。

200円以上の宝くじは買わない主義なのに!

宝くじ売り場のラジオで所さんが三億狙いは連番で!と勧めてくれたので連番で十枚買った。

金を亡くしたからと言って守りに入ってはいけない!

…と思うのだ。ワタシはッ!

そこで更に攻めるのじゃ!!

攻めたね、己は。

そしてメーヤウも喰った!ガンガン汗流した。

己ってスゲェとぷち思った。

でも、福本伸行さんに言わせると、負けが込んだときこそ四暗刻などいけそう(負けが込んでるときに限っていけそう)でもいかず、次の流れを待ったほうがいいということになるだろうか。

だが、日本で唯一十年連続、長者番付に入っている斎藤ひとりさんに言わせると、ちょっと行動してちょっと悪いことがおきたからってそれをやめない。まずはウミがでてから、事態は好転するのだからということになるだろうか。

どっちも正解。選ぶのは己。

攻めたね!己は。うふふふ。

なんか侠のロマンよね。

 

 

以上、不運っちゃ不運。

飯とかおごってくれるなら遠慮無くおごられます。つぅかさぁ、君が十四万拾ったらどうする?四万くらい抜いたっていいよ。七万くらい抜く?きついなぁ。まぁ、いいよ。もってってくれ。でもさぁ、あとは警察に届けるだろー。十四万拾って十四万使い込むか?フツー。もぉ。