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06.05.23 火曜日

白い詩を詠もう2

■友いる物語
※この話はフィクションです。実際の出来事・団体・人物に想を得ていますが
基本的に関係はありません。

水曜日の夜9時。“若社長”森村泰明は、渋谷のカフェにいた。

義姉の“白いハヤブサ”森村ゆきが人材派遣会社で課長に昇進したため、そのお祝いに彼女の
大好物のヨーグルトケーキを用意した。

カフェには泰明と合わせて、彼女を知る仲間が6人ほど集まっている。
それぞれがヨーグルトケーキにチョコレートでお祝いの言葉を寄せ書きしていく。

もちろん、彼女には内緒だ。サプライズのお祝いである。

泰明は自分に義姉がいるという不思議な違和感に思いを馳せていた。
『小学校の時、そりゃいつかそうなるだろうとは思いつつも実際に迎えてみると不思議なものだ。
 兄貴の嫁さんか。俺も今や三十。三十って…あの頃からすりゃオッサンだぜ。あの頃の俺と
 何が変わっただろう。』
 
28歳でオフィス物件の仲介を扱う不動産会社「オフィスバンク」を起業。今では軌道に乗り、
社員も着々と増えている。

ど平日の水曜。社長として今晩だってもちろん忙しくなくはない。こうしてカフェにいることは
仕事だか睡眠時間だか必ずどこかに皺寄せを生むだろう。

だが、義姉が喜ぶことを考えてここにいる。

人はパンのためのみに生きるにあらず。

社長として充分な金を稼いでいるし、仕事のやり甲斐もいわずもがな大きい。

森村泰明はパンのためのみに生きるに非ず。やり甲斐の充足にも生きるなり。

が、しかし、それでも尚、彼を言い表してはいない。

ちょうど目の前でチョコレートでメッセージを書いていた社員の“まふー”村野茉文に泰明は問うた。

「村野、お前こんなことしてたら後で仕事きつくなるのに、なんでこんなことしてるの?」

村野は一瞬、きょとんとした顔をして、すぐに笑って答えた。

「愛ですよ!森村さん。」

照れたように冗談めいた口調だったが、それがこの場をもっとも最短距離で表現した言葉であることを
誰も疑いはしなかった。

愛とは。

ごく僅かな親友と恋人と家族に限られて向けられるものだけではないだろう。

ここにいる6人。

泰明はゆきの義理の家族であるが、他の者はゆきと仲がよい者から会社であいさつを
するだけの者まで、その濃淡は様々である。

愛とは、濃淡の問題ではないのだと泰明は知った。

「ゆきさん、喜ぶだろうなぁ」と村野は書き続ける。

「ていうか、お前『ゆかさん』になってんじゃねぇか」

■友いる出来事
※実際の出来事です。


昨日に引き続き渋谷のカフェでパラサイヨメンバーと会う。

“若社長”森村泰明

投稿者 多苗尚志 : 2006年5月23日 17:28編集
[ 村野茉文伝森村泰明伝 ]

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