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06.11.22 水曜日

多苗尚志のサシ呑みクエスト 32 森田英一

倭[おとこ]とは、9年前に出会った。


9年前。


下北沢。


"クールな熱"藤沢烈が主催。


小規模ながら、全国から大学生が集まり、それぞれが取り組んでいる活動をプレゼンする場があった。


それぞれ前に出て、

「環境問題に取り組むNPOやってます」、「途上国の支援団体やってます」...

という具合に。


玉石混淆が渦巻く中、3人組の男たちが己の直感を惹[ひ]いた。


真ん中の倭がプレゼンをした。


「大阪から来ましたぁ。」


そんなことはどうでもいい。


取り組んでる活動は「主に日本の社会問題について語り合うメーリングリスト」

ということで、己も後にそれに加わるが、

その中身さえもどうでもよかったのだ。


「覚悟」が突出していた。


実際に行動している。


それはプレゼンに立った全員がそう。


だが、覚悟の量が違った。


やるんだ!


やるんだ!!


やるんだぁ!!!


客席のパイプイスの並び幅全部をぴったりカバーする大きさの

黒い鉄柱の底面、大きな大きな正方形で、

ところてんのようにオーディエンスをズズズーッと1m後ろまで一掃するような

「やるんだ」が彼から発されていた。


それでいて独りよがりではなく

「みなさんひとりでも多く、MLに参加して頂けたらと思います。」

という柔らかな協力の要請。


もう他の奴との出会いなんてどーでもいい。


己はこの倭とだけ話したいと思った。


倭は森田英一と名乗った。


---
9年のつきあいで、6年目が最後。


3年ぶりにサシで呑む。


俗に「何年ぶりに会っても昨日会ったみたいに話し合える友」という。


"黄炎社長"森田英一と己の関係は、

「何年ぶりに会っても~」なんてレベルはとっくにクリアしているが、

なにを話すかが問題なのだ。


昔話を朗々と語っても意味がない。


お互いを知る話をしても意味がない。


だって、いいとこも悪いとこも既にお互いよく知ってるから。


現在を語らなければ。


現在を語るには3年というブランクは長い。


いや。


白状すれば、己が臆したのだ。


社長として日夜激務の第一線を張る彼に対し、一介の営業マンである己がなにを語れるのか。


出会いに関しても気づきに関しても...彼に対し、目新しく己が語る言葉を持っているだろうか。


いやいや、立場など関係ない。


営業マンだろうが本気で生きていれば、その言葉は友の胸に刺さるハズだ。


己は久しぶりに彼に相対し、自分の生き方に迷ったのだ。


最近の自分の生き方に自信が持てなかったのだ。


悔やまれる。


臆したことが悔やまれる。


彼に比べると実際、己は本気の人生を生きていないかもしれない。


かたや社長を務め、並みいる企業の社長クラスと出会い、

日夜、3時間睡眠の激務を遂行。


結婚し、ふたりの子を設け、休日は父としての役割をまっとうし、

実家にもお金をドンといれて親孝行をしている。


自著も近々出版され、各種講演会、テレビ出演などの引き合いもある。


片や己。未だに結婚もしてない、仕事もフラフラしてるような己が

なにを語るというのだね。


臆したな多苗尚志。


人生に貴賤なし。


人生とは比べるものではない。


すべての人生は正しい。


己は間違いなく己の人生を生きている。


己は己の人生を愛している。


こちとら"最強無敵"


己は胸を張って自分の現在を語ればよかったのだ。


それが悔やまれる。


なんだかんだいって3時間は語り、

森田英一との呑みは実に気持ちがよく、己は自然と笑顔を浮かべ、

最高の時を過ごしたこともまた事実であった。



投稿者 多苗尚志 : 2006年11月22日 00:05編集
[ 藤沢烈伝森田英一伝縁~出会いの物語多苗尚志のサシ呑みクエスト ]

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