友の小咄

05.10.11 火曜日

体育会系ですから

“闘魂伝承”畑大輔は高校時代剣道部だった。

神奈川県化有数の名門部。

そこにいた彼の練習の日々は並大抵ではない。

まず毎日血の小便なのだそうだ。

部員全員。

そしてその血の濃さで今日は誰が一番疲れているかを知り、
そいつをかばうというかねぎらうのだそうだ。

今日は早く還った方がいいぞとか。

血の小便は前提ですから。

投稿者 多苗尚志 : 10:14 | トラックバック (0)
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05.10.05 水曜日

“岩武士”村上武士の小咄

“岩武士”村上武士は九州男児で、自分の中にビシッと流儀をもっている倭(おとこ)だ。

どんな流儀だというに、老人には席をゆずるとか選挙には必ずいくとか
そういう少なからず暑苦しいモノも含める。

これは電車男が流行る前の話しだ。

ある駅で電車を降りて村上がホームに立つと男が女を殴っている。

その痴話から男と女は恋人関係であることが推察できた。

公衆の面前で殴っているが、今の時代、今の都会それを止めるような者は
誰もおらず、早く駅員を呼んでこいってなもんだ。

村上はひとり震えていた。

武者震いである。

彼の中では男が女を殴るなど当然あってはならないことだ。

じゃあ、どうする?

止める。

止めるの?

怖い。

村上はがたいはまぁいいが、腕っぷしは褒められたものではない。

村上は勇気を出して男の腕をつかんだ。

男は憮然と不審そうな顔で
「なに、あんた?」
と尋いていた。

村上は気の利いたセリフを用意してなかったことに気づき、後悔した。

なにも言えずにいると男は

「ちっ」と腕をふりほどき、女に「いくぞ」と言い階段の方へ去っていった。

村上がほっと胸をなで下ろすのも束の間、階段の方から再び殴打の音が聞こえる。

当然、村上は再び止めに走った。

ガツっと腕をつかむ。

「だからなにあんた?」と男に尋かれ、またしても答えを用意してなかったことに
赤面する村上。

男は馬鹿馬鹿しいというように、女も連れずひとりで去っていった。

ひとり取り残された女と村上の目線が合う。

女性を助けてポイントを稼ぐなんてことはまるで考えてなかった村上だが

これは、しかし、チャンス、なのではないか。

村上と女の間で一瞬時が止まる。

女は「待って~」と男を追っていった。

村上の貸そうとした手が宙に浮いていた。

投稿者 多苗尚志 : 19:07 | トラックバック (0)
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