多苗: |
最近映画観てる? |
岩村: |
うーん、現行のはあまりみてないかな。 |
多苗: |
なんかさ、最近観ててね、水戸黄門っつぅかさ。
どの映画でもみんなパターンがあんだよね。
サスペンスとか恋愛映画とかラストサムライとかも全部そうだけどさ
みえるっつぅか。
なんていうんだろ…
シリアスがあって・ピンチがあって・笑いがあって・ラブがあって…ドーンみたいな。笑。 |
岩村: |
笑。わかんねぇよ。 |
多苗: |
笑。わかんねぇな。
なんか思ったのは ハリウッドは分かりやすい映画じゃない。
でも、小説は分かりやすくなくていいんだよね? |
岩村: |
うんうんうん
小説とかだったら誰も言えないことを言って
嫌な気分にはさせないんだけど…
誰も気づかなかったことを気づかせるっていうのが面白いかな、と。
分かりやすいものを書いてもしょうがないかな。 |
多苗: |
ああ、ああ、脚本と… |
岩村: |
うん。脚本と小説は分けてるってことね。 |
多苗: |
脚本として分かりやすいってのは…そうあるべきだと思う? |
岩村: |
べきではないと思う。
ハリウッドってね、映画だけでは赤字なの。
どんな大作も赤字なの。
グッズだとかテレビの放映権だとかで回収することがビジネスモデルになってるからさ。
でも、フランス映画とか、カンヌとかで受賞しちゃうような映画ってさ
数千万円でつくって数千万円ちょっと…笑。もうけて
でも、利益が出てるから映画だけで回ってるのね。
だから一部の人に分かる映画ってのはありだから、べきではないと思う。 |
多苗: |
作り方がちがうってことね。
岩村ちゃんがハリウッド映画やってやろうじゃん、やれるよ!って思ったキッカケはなんだったの?
|
岩村: |
えっとねぇまずね、まずライターの仕事で映画の撮影隊に |
多苗: |
うんうん…
(店員に)すいません!
(ごはん)お代わり |
岩村: |
(3杯目だろ?)まだ食うのかよ。
映画の撮影隊についててそれを毎日報告するって仕事だったの、その映画、日本映画だったんだけど、を取材してる時に、脚本家の人と友達になったの。
それでいろいろ話をしててね、あ、脚本もありじゃん!って思ったの。
それまで小説だけ考えてたんだけど、脚本もありだなって
脚本も面白いかと思って、その人からも脚本向きかもしれないとも言われたのね。
じゃあ、やってみようと
でも、そのときなんで日本映画でやらなかったかと言うと
日本てすごい閉鎖的なのね。
士農工商じゃないけどさ
それはカメラマンとか照明とか立場が決まっててね。
閉鎖的で封建的ですごいやだったのね。
だから日本にこだわらなくてもいいかな、と
脚本家とかさ、こう、しいたげられるわけ。
お給料も少ないとか。
映画って監督とカメラマンが上にいる世界だからさ。
それおかしいだろ、ゼロからものをつくったのは彼女、脚本家であってさ。
カメラマンは、別にゼロから創ってるワケじゃないからさ、
クリエイターに対する尊敬が絶対足りないと思ったのね、日本は
|
多苗: |
ハリウッドだったらそれがちがうワケね。 |
岩村: |
ちがう。
全然ちがう。
ハリウッドだったら、スゴイいい脚本を書いたら
どんなに無名な人でも使ってくれるし、
で、あとひとつイイものを書けば次から
最初のアイディアを相談されるのね。
それでアイディアを少し出しただけでそれにペイしてくれるわけ。
アイディアを伝えるだけで。
そうしたことがちゃんと確立されてるの。 |
多苗: |
脚本家って言うあり方とさ、あと原作者ってあるじゃん。
そういうやり方もありだよね? |
岩村: |
ありありあり
ありだよね。
それも考えた。 |
多苗: |
原作者の場合だと、そこで成功しないと注目されないのかな? |
岩村: |
そうだろうね。
小説、エンターテイメントの小説を書かないと。 |
多苗: |
で、さっきの話に戻るけど
ハリウッド映画ってなんであんな…
恋愛だろうがサスペンスだろうがラストサムライだろうが結局なんつぅか同じでわかりやすいわけ?
|
岩村: |
うん
ハリウッド映画はパターンが決まってるのよ。
パターンを評価する人がいるんだよね。
脚本もらって読んで、これにはこういうパターンを踏んでるから
いけるんじゃない?って評価をエージェントに出す人がいるのね。 |
多苗: |
なるほどねぇ。
俳句みたいだな! |
岩村: |
詰笑。 俳句なのかな? |
多苗: |
うん、パターンは決まっててその中で表現するってな。
でも、昔はそうじゃなかったわけでしょ?
ハリウッドもさ。 |
岩村: |
どうだろう
エンターテイメントの物語って結局二十四個くらいのパターンがあるの。
そういう目でみてみると実際、どれかのパターンにあてはまるからさ。
だから、新しい物語はない。
どれかのパターンにあてはまって、あとは設定・シチュエーションだけなんだよね。
動物を虐待する主婦が出てくるとかね。
そのショッキングさが問題であって、新しい物語はないんだよね。 |
多苗: |
なるほどね。
それはさ!昔の白黒映画でもそう? |
岩村: |
それは…ちょっとちがうかも、ちがうかもね。だから、俺は昔のが好きなの。 |
多苗: |
己もだよ!
己、ビリーワイルダーが好きなんだよ。 |
岩村: |
(昂奮して)笑。そうなの?意外だね!意外だね! |
多苗: |
(冷静に)うん、そうなんだよ。好きなの。
で、その二十四パターンに小説もあてはまらないよね? |
岩村: |
エンターテイメント小説はあてはまるね。文学とかはまたちがってくると思うけど。 |
多苗: |
ああ。ああ。なるほどね。
でも、ありだよね?そのパターンってのはさ、 |
岩村: |
うん。ハリウッド分かりやすくてどうかって話もあるけど、あれだけ世界中に受け入れられている
ってのは凄いと思う。 |
多苗: |
あのさ、言葉の話なんだけどさ…
よくいろんなHPとかでステキな言葉集とかってあんじゃん。
あれさ、嫌いなんだよね。 |
岩村: |
うん、なんで? |
多苗: |
なんかさ、切り取ってる感じがするというかさ、
お前が感じたものと己が感じるものは別っていうかさ… |
岩村: |
うん
|
多苗: |
いや、笑。でもね。それもアリなのかなって話がしたくって |
岩村: |
笑。最近、多いね。これもアリなのかなって話。最近、変わってきてるんじゃない?
|
多苗: |
笑。そうかな。そうかもな。笑。
でね、己が好きな言葉でね、アインシュタインとゲーテの言葉が好きなんだな、よく響くなってことが分かってきた。
ふーん。
あの二人はねぇ…超えてる。
なんか他の言葉だったら色々ツッコミどころがあったり、どっかで自分も感じていたことだったりするんだけどさ、あの二人は、やってくれる。予想がつかない。
|
岩村: |
ふーん。 |
多苗: |
じゃ、ちょっと一応言ってみるね?
笑。岩村ちゃんにとっては「え?フツーじゃん」とかってなるかもしれないけど。
笑。言ってみるね。
アインシュタインが言ってるのは、
「今自分が抱えている問題は今自分がやっているレベルでは解決できない。」
|
岩村: |
含笑。 ふふーん |
多苗: |
笑。イマイチだったらしい!
|
岩村: |
それを聞いて多苗はどう思ったの? |
多苗: |
そうか!と… |
岩村: |
ふつうならここで解決できるぜっていうところを解決できないというアインシュタインがすごいってわけ?
|
多苗: |
そうじゃないそうじゃない
根本から間違ってたんだなってことよ。
だから…そのぉ〜きちんとした生活をしたいのに、できなかったとするじゃない?
それは…一人暮らしをやめるとかそういうそもそものレベルの違いをもってこないと解決しないってことよ。
|
岩村: |
うん。
|
多苗: |
笑。思ってた?知ってた?
|
岩村: |
それをその言葉でいったアインシュタインはスゴイと思うのね。
俺は、そういう言葉に乗っちゃうってのは嘘だと思ってるからさ、例えば自分で分かりたくて色々考えてるのにそういう言葉に出会った時にそうそう!それが答えってのはやっちゃいけないと思うのね。
自分で言葉は出してこないといけないからさ。
だけど、そのアインシュタインの表現はいいなと思うよ。
今までと同じことをやってて違う結果を期待するのは馬鹿だっていうのは分かるけどさ
|
多苗: |
うん。それでね、なんでそれが響いたかって言うと
どーもね、自分が同じ所をグルグル回ってる気がするんだよね。
なにか、例えばきちんとした生活をしなければいけないと思ってる。
思ってるんだけど解決策がみえずに、また同じ所でハァ〜ってため息をついてたりする。
|
岩村: |
うんうんうん、なるほどね。 |
多苗: |
だから、そう、もともとそもそものやり方が間違ってるんだなって |
多苗: |
岩村ちゃんてさ…
本気で生きてる? |
岩村: |
笑。本気で生きてる…
本気で生きるって… |
多苗: |
いやいやいや、たとえば、たとえば、九時に起きなきゃいけないとするのに十時に起きる己って
本気が足りないと思うの。 |
岩村: |
なんかそれで問題あるの?
九時にアポイントがあるのに、十時に起きたら俺はしばきたおすけど
それで問題なければいいんじゃない? |
多苗: |
…。
いや、問題は自分の中にあるの。
だからそこでいっつもあぁ〜もう本気で生きてないなってしょぼぉんってなるの。
岩村ちゃんはそういうのないの? |
岩村: |
…
いや、あるあるあるある
でも
本気で生きてるって漠然としてるよね。
本気で本を書いてるから本気で生きてるんじゃないかなぁ
あ〜ん。
本はね覚悟がいる
ん?
本を書くのは覚悟がいるよ。
凄い思った。今回一冊出して。あれはホント生半可じゃできない。生半可じゃ出しちゃいけない。自費出版だったらいいけどね。覚悟がいる。凄い覚悟がいるよ。一冊出してみ? |
多苗: |
あ、そう!
あ、そう!!本気だね。 |
岩村: |
本書いてるうちはだから平気かな。本気で生きてると言える。 |
多苗: |
あーん。
なんかね、
いろんなこうさ、あいつはスゲェよ的話を聞くとね。
どんな苦労をかけて会社を建てたとかね。
極地にいってスゲェ旅行をしてきたとかね。
ヤクザに喧嘩をふっかけて無事で帰ってきたとかね。
…
そういう話を聞いた時になんて己って本気で生きてないのかと思うよね。 |
岩村: |
笑。そういうことなのか? |
多苗: |
そういうことなんだよ! |
岩村: |
それは本気というか… |
多苗: |
いや、だからそこには本を書くと言うことも含まれるよ?覚悟があるっていう
あー
やってんだな、みんなっていう
やりたいことがちがうんじゃない?
いや、己が悔しいと思うってことはさ、そこに価値が含まれてるわけ。
だから、オリンピックは入らないよ?
笑。
オリンピックで金とりやがったよ、あいつって
それはどーでもいい。 |
岩村: |
笑。 |
多苗:
|
笑。くれてやるよって感じ。 |
岩村: |
笑。なるほどね。
本気ってなんなの?多苗にとっての本気とは…
|
多苗: |
(黙り込む)
それはさ!フィーリングだからさ |
岩村: |
ああ、いいねぇ!いいね!論理では説明できないって言う… |
多苗: |
それもそうだし!
自分で感じることなんだっていう…
満足するかどうか。自分で本気で生きてますって言えるかどうか
でも、今思ったのは、岩村ちゃんって生活そんなぴっしりしてないと思うんだよ。
たるいところもあると思うんだよ。 |
岩村: |
あるよ。 |
多苗: |
でも!本書いてるからいいんだよ |
岩村: |
そこが自分の立ち位置だと思ってるからね… |
多苗: |
あ〜そうかぁ。
そうだよねぇ。
あなたそもそも本気って言うことを認識してないもんね。 |
岩村: |
そうだね。 |
多苗: |
あ〜
己が岩村ちゃんの他に本気で生きてるなって思う奴は五十川藍子なんだよね。 |
岩村: |
あー、五十川藍子は…面白い奴って対象だな。 |
多苗: |
あ、そう! |
岩村: |
あんまり人を本気という軸でみることがないからね。…わかんない。 |
多苗: |
なんかそもそも見方が違うんだな。
あなた、でも、昔からね。本を書こうとやってるんだね。 |
岩村: |
とりあえずエッセイは一冊書いたからね。 |
多苗: |
あー、夢って本気なのかもね。
だから夢がない人は夢を持ってる人に憧れるのかもしれない。 |
岩村: |
夢って本気じゃないと達成できんからね。 |
多苗: |
あなたいつ頃から書き始めてるんだっけ |
岩村: |
小学校三年から… |
多苗: |
あ〜それはなんとも…。
己も漫画家やってればよかったのかな。 |
岩村: |
漫画好きなの? |
多苗: |
笑。漫画描いてたよ小学校のとき。
あと己って、最近気づいたんだけど、周りからよく言われるのが飽き性らしいね。
|
岩村: |
笑。そうなの? |
多苗: |
らしいよ。
続かないな。 |
岩村: |
興味が多すぎるんじゃない? |
多苗: |
どうだろ |
岩村: |
なんかひとつやってある程度できるなと思ったらもう、次に行きたくなっちゃわない?
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多苗: |
あるあるある
それはあるなぁ。
続けるのが大切なんだよなぁ
(沈黙)
続けるのが大切だと思う?
|
岩村: |
思う! |
多苗: |
笑。 |
岩村: |
本気のことに対してはね、続けることが大事だと思う。
だから前言ったじゃん。なんでも十年やってみろって。
十年やったら誰でもその道のひとかどの人になれるでしょう。
|