己は自他共に認める辛党でカレーが好きだぞ。
いきなり好きだぞといわれても困るかもしれんが。
辛党だからラーメンにもラー油を入れるし、蕎麦には輪切り唐辛子がよく似合う。
もう味が最初から決まっていてそれ以上辛さを調節できないようなカレー店でも、
「いや、そこをなんとか赤くしてもらえませんか」なんて交渉しちゃうくらいだぜ。辛いって美しい。
カレーイスト・華麗ストなのです己。
しかしそんな己とて生まれきってのエリートではなかった。
家庭で出てくるカレーでもひいひい言っていて、[辛口]はまず食べられなかった。
[甘口]とは言わないまでも[普通]じゃないと食べられなかった。 その段階から慣れていった。
辛さは慣れることができる。努力、鍛錬。それらを積んで更に美味しい味に邂逅できる。
辛さとはそうした奥深さを持っている味覚だ。
己は辛いモノを食べてる時はコップ2杯分の汗をかいてしまう。
知らない人が見れば「え?どうしちゃったの?救急車呼ぶ?スポイト持ってきてもらう?」という感じだが、そういう体質なんだ。
本人は実際シアワセなのだ。一人亜熱帯スコールって感じだなぁ。(遠い目)
中くらいの辛さを食べるときでもホンット辛いのを食べるときでも己のかく汗の量はいつもコップ2杯分。
新陳代謝オーバードライブ。なんとも健康的なのだ。
そんな己が修行した虎の穴は、千葉県は柏市にあるカレーハウスボンベイという店だ。
このお店にまつわる思い出話をさせてほしい。
『ボンベイ』は駅から徒歩5分くらいの距離にある店で界隈では有名なカレー屋だ。
お子様からお年寄りまで幅広く人気がある。特に地元の高校生から浪人生に人気があるのではないか。
君には高校時代に親友がいたか?
高校時代というのは比較的親友を作りやすい時期のように思う。
己には親友がいた。奴の名前は木村哲史。キム・タナオの仲だった。
キムとは高校一年の時にクラスが一緒だったが、その時は親友というほどではなかった。
奴はクラスの人気者系で、ススんでる奴。
カップル率の低い我が校で早くから彼女もいたし、禁止されてたバイトもしてたし、バイクにも乗ってた。タバコも吸ってたが不良ではない。優しくて元気な奴。テニスが上手く空手もやっていた。日本史が得意だった。
人気者ではなく人気者系というのがミソでいまいち誰からも好かれるというタイプではなかった。
高二の時はクラスが違ったが、
ある日、キムが廊下で、たそがれていたところに己が近づいていって話したとき己達は親友になった。
中学はまるで違ったが、気がつくと互いの家は橋をはさんだだけで近く、自転車で五分くらいの距離だった。
キムとはもう洗いざらいなにからなにまで語り合った。
哲学的なことから社会のこと、女のこと、学校の話題なにからなにまで。
同じ女の子を好きになったことはなかったが二人ともハードロック・ヘヴィメタルが好きで、格闘技好き。
さらにゲームも好きで奴の部屋でよく名勝負を繰り広げていた。
学校以外で遊ぶときはいつも奴の部屋。うちに来たことはなかった。
バンドを一緒に組んだこともあって奴がギターを弾いて己が歌った。奴の部屋でよく練習した。
二人ともいい加減な性格で場当たり的だから、将来のこと・夢を語ることはあまりなかった。
なかったがどうとでもなると思っていたし、希望に溢れ毎日が楽しかった。
高校時代の親友というのは夫婦みたいな関係になるものだと考えるのは己だけだろうか。
奴は学校をサボることがあったし、部活も違っていたから、一緒にいない時も珍しくはなかったが
己の心の中にはいつもキムがいた。
『ボンベイ』は高校時代にキムから教わった店だ。
キムはやたらこの店を気に入っていて、「もう三食ボンベイでも構わんですよ。」と言っていたが
当時、あまり食に、カレーに、興味の無かった己としては、「何言ってんだ」くらいに流していた。
しかしなんとなしに引っ張られて店までついていくと果たしてあまりにおいしく、
敢えなく己もボンベイジャンキーになってしまった。
高校在学中は意外と駅前で遊ぶことはなかったのでごくごくたまに行くくらいだったが
高校を卒業し、一浪してからは本格的に毎週通うようになった。
ふた巻きにつづく
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